近視の解明の未来

一般の普通の人々は“人間の体の仕組みはすでに解明されている”・“最先端の医療技術があれば直せない病気はない”・“病気が治らないのはその技術を使いこなせない医者のせいだ” といった前提を持っている方は多いんだと思います。

しかし実際には人間の体の仕組みや病気の原因を完全に解明するには程遠い状況です。眼科で言うと“白内障手術で人工レンズを入れる”のは“白内障が治った”のではなく、“透明な水晶体に戻せないから人工レンズに入れ替えた”だけです。

さて近視のお話でこのことを考えてみると、学校健診で近視と言われて眼科を受診する小中学生はたくさんいます。眼科に来て“なんか近視を止める方法はないですか?”とか“なんで近視になるんですか?”とよく聞かれます。近視が進行するよりは良い視力が維持出来た方がよいですが、近視の進行の解明はそこまで進んでません。

たぶんメガネ、コンタクトレンズ、レーシック等で矯正できるので、そんな研究をする人が少ないんだと思います。科学技術の進歩を待っていても近視の進行という問題はなかなか解決しそうにないのは、世の中の早急に解決すべき生命にかかわる疾患の研究の方が優先されるからです。

きっと世の中の近視、遠視、乱視の人や老眼の人たちの中には、“いつもメガネ、コンタクトレンズをしないと見えなくて困っている人がこんなにたくさんいるんだから、さぞやこの分野の研究は進んでいるんだろう”と考える人がいるかもしれません。残念ながら前述したようにそんなに早急な解決は期待できそうにありません。

少し前までは屈折矯正の先進的な新しい方法と考えられていたレーシックですが、登場から15年以上経つと今やそれほど新しい方法とはいえません。メガネ、コンタクトレンズはなくなりませんし、レーシックなどの手術での矯正方法もこの先ずっとなくなることはないと思います。

ドライアイを考える

ドライアイの原因はいろいろあります。

レーシックもその原因の一つですが、全身疾患からドライアイを来すこともあります。

このドライアイ専用の雑誌を読んでみると勉強になります。

ドライアイの原因をわかりやすく記載してあります。

明日からの診療に役立ちそうです。

眼科ボランティア

世界中には眼科ボランティアを行っているNPOがたくさんあります。

日本からもアイキャンプという名前で定期的にインド、ネパール等の医療過疎地域へ出向いて、眼科診察や白内障手術を中心とした眼科手術が行われています。

世界でも同じように医療過疎地域で眼科医療を行っているNPOがあります。ORBISもそのひとつです。ORBISはFlying Eye Hospitalという、眼科手術の可能な手術室を備えた飛行機で現地に飛んで行って、その地域で診療、手術を行っています。

日本からアイキャンプに参加されている先生のお話を聞くと、以前は海外の医療過疎地域は電気事情が悪いところが多かったみたいで、停電ぎりぎりで診療をしなければならない場所もあったそうです。衛生事情もあまり良くなかったんだと思います。

このORBISを始めた先生たちも最初は医療事情が悪くて困ったんだと思います。だったら飛行機ごと機材を積んで飛んで行こうと考えて現在に到るんだと思います。発電設備のある空港で設備の整った飛行機の中では通常の病院と同等の環境で手術、診察ができるみたいです。

 でもこのORBISの活動って相当お金がかかりそうです。かなりの額の寄付で成り立っているみたいです。大手医療品・医薬品メーカーや航空会社、時計メーカーがメインスポンサーになっています。以前オメガの広告でこの“空飛ぶ眼科病院”が掲載されていたように思います。

当然ですが飛行中の飛行機内では医療行為は一切していないそうです。スタッフも食事して寝てるみたいです。医療は現地に着陸してからで、現地スタッフや現地ボランティアと一緒に行うらしいです。

屈折矯正手術のガイドラインを再読する

日本眼科学会に所属する眼科専門医が屈折矯正手術を行うにあたって、日本眼科学会が作成したガイドラインに沿って手術を行うことが望ましいとされています。一番最初のガイドラインは平成5年に作られました。その頃は私はまだ学生でインターネットも普及していない時代です。屈折矯正手術を受けたいと思ってましたが国内では手術を行っている施設がどこにあるか解らなかったですし、術式もRKかPRKしかなかったと記憶しています。たぶん手術費用もかなり高額だったと思います。

屈折矯正手術のガイドラインには適応基準も記載されています。エキシマレーザー手術の基準なのでレーシックもPRK・ラゼック等の表面照射も同じ基準で考えるように、ということだと思います。実際には近視度数のディオプターよりも角膜切除量で適応基準を決める施設が多いと思います。使用するレーザーやレーザー照射径によって同じ近視度数でも角膜切除量は変わってきます。もともとの角膜厚、角膜切除量、残存する角膜厚によって手術適応の可否、適応術式が決まると思います。私の知っている施設ではどこもだいたい同じような基準で、過度な角膜切除量や過度な残存角膜厚に設定している施設はありません。適応禁忌の基準もどこの施設も同じだと思います。術後検診の期間も3~6ヶ月くらいまでを設定している施設が多いと思います。術後検診での検査内容と投薬内容もどこの施設でもだいたい同じだと思います。

この術後合併症の対処の解釈で困るのが “ 疼痛 ” と “ グレア・ハロー ”です。適切な対処とあるのですが、この2つだけは手術を受けた方の主観ですので適切と考える対処法は医師や施設によって差がありそうです。それ以外は眼所見や検査所見を見落とさなければ対処方法があります。

 

これらはガイドラインですから手術を行う時に守るのが好ましいルール目安です。

その医師や施設の経験から内容を拡大解釈しても良いのかもしれません。

手術を受ける方の不利益があまりに大きいのであれば、いくら希望されても手術は行ってはいけませんが、経験的に安全マージンが確保できるのであれば、このガイドラインから多少逸脱していても十分なインフォームドコンセントのもとに手術を行っても良いのではないかと考えています。

イントラレースレーザー

こちらの機械はフラップを作製するイントラレースレーザーです。

フラップの厚さを数マイクロのレベルで調整するため、かなり精密な機械で温度変化、湿度変化に敏感です。

そのため手術室は一年中エアコン管理して少し寒いくらいの環境で設置しています。

しかし夏場、特に梅雨時期は厳密に環境を管理していても湿度変化に悩まされます。

機械の許容範囲を超えると。。。安全のためレーザーにロックがかかり操作できなるようになっています。手術中のレーザー照射中に中断することはありませんが、安全のためにメンテナンスと再起動に時間がかかるので、手術の開始までに多少お待たせするかもしれません。

日本医師会雑誌から考えてみる

日本医師会に入会していると日本医師会雑誌が定期的に送られてきます。

普段は内科とか外科の疾病を中心に特集されることが多いのですが、今月は眼科が特集されていました。内容は白内障や緑内障という比較的わかりやすそうな疾病です。

日本医師会の雑誌なので、全ての診療科の先生方が購読するのでわかりやすく書いてあるのかと思いきや。。。

結構わかりづらそうな。。。眼科医であれば簡単な内容ですが他の診療科の先生には難しいかも。。。“ これで明日から緑内障の診療はバッチリ・・・ ”とはならないでしょう。

白内障手術の解説も、眼科のこと(特に目の構造)を詳しく知らないときっとわかりにくいだろうなって思います。ホントによくわからずにみると・・・“ こんなに目の中に道具を突っ込んで大丈夫か??”って思われてしまいそうです。

私も他の診療科の最新医療ってよくわからないことはたくさんありますし、他の診療科の疾病の特集を読んだりしますが・・・理解不能な内容も多々あります。

そう考えると。。。他の診療科の先生からはレーシック等の屈折矯正手術は理解不能な診療、手術のひとつなのかもしれません。

もしかすると・・・ごく一部の先生からは“ レーザーで近視が良くなるってホント?” くらいの理解しかされていないかもしれないです。

眼内レンズの精度

眼内レンズの度数を正確に決定するためには、角膜のカーブと目の大きさ(眼軸長)を正確に測定しなくてはいけません。

少し前までは超音波を使って眼軸長を測定するのが一般的でしたが、最近は新しい方法で測定します。

一般的なのはZeiss社のIOLマスターと言われている機械です。

かわもと眼科ではNIDEK社の光干渉式眼軸長測定装置を導入しています。

性能は同等で、画面のレイアウトもIOLマスターとほとんど同じです。

こちらの測定機器を用いると通常の眼内レンズから多焦点眼内レンズ、レーシック後の白内障手術での眼内レンズの度数を求めるときの精度が格段に向上します。

特にレーシック後の白内障手術では眼内レンズの誤差が生じやすいといわれています。こちらの測定機器で専用の計算式を用いると正確な眼内レンズ度数を求めることができます。

この測定機器が対応できない症例もありますので、今まで通りに超音波を用いた眼軸長測定方法も併用することもあります。

今週のPTK

久しぶりにPTKの症例です。

今回の症例は帯状角膜変性症です。

角膜混濁により視力低下と角膜乱視が認められます。

PTKで約100μm切除しました。

もともとの視機能にもよりますが、この混濁がある程度は解消されたので、それなりの視力回復は期待できそうです。

PTK後の角膜表面の回復はラゼックの術後とほとんど同じです。視力、視機能は約1週間から10日間程度かけて徐々に改善していきます。

セカンドオピニオン

とある某レーシック施設で手術を受けられた方が視力不良で来院されました。

「ラゼック手術を受けて術後3ヶ月経過しているが、まだ見えにくい」とのことです。

裸眼視力は0.6~0.7くらいです。

ラゼックで術後3カ月も経過すれば、レーシックの術後と同等くらいに視力が改善しててもよいはずです。いろいろデータを調べてみると。。。

散瞳してない状態の度数は少し過矯正ですが、それほど悪いデータとは思えません。

散瞳後の度数をチェックすると約プラス2D程度の過矯正のようです。

現在の角膜厚の残りは350~360μmくらいです。

過矯正となっているのが視力不良の原因ですが、このプラス2Dの度数が自然経過で改善するとは考えにくいです。

このプラス2Dの度数調整とこの残存角膜厚であれば経験的には再度ラゼックで追加矯正は問題なく行えますので。。。術後6ヶ月から1年くらい経過を見てから追加矯正を受けることをおすすめしました。

こちらの施設でも対応はできますが、術前からのデータや費用面を考慮して最初に手術を受けた施設に通院することをおすすめしました。

セカンドオピニオンも行っていますが、基本的には最初に手術を受けた施設で再度相談するようアドバイスすることが多いです。