ラゼックの術後経過

ラゼックはフラップを作成せずに、角膜上皮を剥離しエキシマレーザー照射して屈折矯正を行う方法です。

角膜上皮の修復が徐々に行われ、視力が徐々に回復していきます。

①手術翌日は角膜上皮がありません。

②4日目には上皮修復してきますが、一時的にかすみは強くなります。

③1週間くらい経過すると角膜上皮はかなり修復します。

④2週間くらい経過すると角膜上皮がかなりキレイになります。

 視力も日常生活には不便のない状態になります。

 

ラゼックの術後はこのように徐々に角膜上皮が回復していきます。

回復途中の角膜上皮を保護するために約1週間程度は保護用のソフトコンタクトレンズを装用したままお過ごしいただきます。

ある程度角膜上皮が回復するまでの3~4日間は痛みが続きます。また1週間程度は視力回復に時間がかかります。

そのため術後の日常生活には多少は支障がでます。数日はお仕事は控えていただいた方が良い場合があります。

結膜下出血

レーシック術後に白目が赤くなる場合があります。

これは結膜下出血と言ってフラップ作成時に眼球を圧迫することが原因です。

印象としては目の幅が狭い人に起こりやすい・・・気がします。。。

 

かなり重症な印象ですが・・・術後経過としては全く問題ありません。

数日~2週間程度で自然吸収されていきます。

申し訳ないことですが術後に結膜下出血が生じた場合は自然に消えるのをお待ち下さい。

涙点プラグ

 レーシック術後の症状で“ドライアイ”があります。

ほとんどの症例は人工涙液の点眼で症状は緩和されます。

症状の強いドライアイに対しては“涙点プラグ”を使用します。

涙点プラグはドライアイに対する症状軽減のためのアイテムです。

先端形状はこのような形です。

目頭の涙点を塞ぐことによって、目の表面の涙の量が増えるようにします。

この涙点プラグを使用すると・・・劇的に症状が改善する方がいますが、全く効果がない方もいます。。。

目の表面の涙の量が増えるだけでは“乾燥感覚”が解消するわけではないようです。

日本のレーシックの昔と今

ひと昔・・・15~20年くらい前、1990年代に近視を矯正する手術は・・・今から考えたらそれなりにリスクを伴う手術だったんだと思います。

当時の日本はまだまだこの分野の普及は遅れていて、一部の先進的な眼科医が試行錯誤しながら地道に手術していた時代。。。または一部の”眼科以外の先生”が商業的に取り組み始めた時代です。

一部の患者様は裸眼視力の向上を夢にみて海外に飛び出していた時代だと思います。

当時屈折矯正手術はRK、AKといって、メスで角膜を切開して近視や乱視の度数を矯正するものでした。当然ですが手術結果は不安定で、結果の良い人は一定の割合でいたとは思いますが、結果の悪い人も相当割合いたんだと思います。手術費用は100万円オーバーが当たり前の時代だったと思います。

その後はPRKが登場します。ただしエキシマレーザー照射で角膜を削るだけで術後の視機能はあまり考えられていません。眼球追尾システムなんて機能もありません。当然ですが術後グレアハローは強く、多少の照射ズレは当たり前くらいの時代もあったと思います。

そしてついにレーシックが日本上陸です。初期のフラップ作成はマイクロケラトームです。刃物で機械的に角膜表面を薄く切る機械です。作動不良も時々はあったと思います。初期のRK、AKでの矯正手術からエキシマレーザーでの矯正手術に徐々に移行していく時期です。PRKなら70~80万円、レーシックなら100万円くらいの値段だったと思います。

 

2000年を過ぎたあたりでケラトームの精度やエキシマレーザーの精度がだんだん良くなります。フラップ作成トラブルが少なくなり、エキシマレーザーに眼球追尾システムが装備されるようになり照射精度が良くなります。グレアハローを軽減する視機能を考慮した照射が行われるようになります。さらにレーザーでフラップ作成を行うフェムトセカンドレーザー時代が到来します。この頃のレーシック費用は50~60万円くらいだったと思います。

2004年の品川近視クリニック登場からレーシック費用がグッと安くなります。レーシック費用が20万円くらいが当たり前の時代になります。この時期から”安全にレーシックを当たり前に受ける時代”・・・になったと思います。レーシックは安全に正確に行われるようになり、さらにはレーシック以外の矯正方法が行われるようになりました。

現在では角膜の厚さの安全基準、角膜形状の安全基準がある程度整備されています。高度近視や円錐角膜はフェイキックIOLや角膜リング、クロスリンキング等の術式が行われ、レーシック以外の術式が行われるようになり、日本の屈折矯正手術の充実度、安全度のレベルはかなり高くなったと思います。

レーシック以外の手術はまだまだ高価なものもありますが、海外に行かなくても安全で比較的安価にレーシックを行える日本はホントに良い国だと思います。

レーシックを受ける理由

レーシックを受ける理由、きっかけって・・・いろいろあると思います。

レーシックとコンタクトレンズの費用を比較して・・・そんな話はいろんなクリニックのホームページに載っています。現在のレーシック価格を考えると約3~5年でコンタクトレンズ代金を回収できる計算です。

そもそもコンタクトレンズに不便を感じていなければレーシックという選択肢すら考えないと思います。

災害時にコンタクトレンズは不便です・・・震災等でメガネ等を失ったときに裸眼で見えないと困ります・・・という理由で手術を受けに来られる方もいらっしゃいます。

 

そんなことは皆さんご存じで、”レーシックという手術がやっぱり信用ならん”とか、”やっぱり手術は怖い” ・・・という理由でコンタクトレンズを使い続けているのだと思います。

 

もちろんレーシックを知らないという方はいらっしゃると思いますが。。。レーシックを知っている、または周りでレーシックを受けた人がいるのに、自分はまだレーシックに踏み切れないと言われる方はたくさんいらっしゃると思います。

 

ちなみに・・・私がレーシックを受けたのは、”近視は目の良い人に比べて不利だから”という理由です。

ネガネ・コンタクトレンズ等で矯正しないと見えないのはやっぱり不利です。

もしも神様から” また明日からメガネ・コンタクトの生活してね!” って言われたら・・・かなり面倒クサイです。。。たぶんまたレーシック受けに行きます。。。

朝晩のレンズの付け外しの時間、レンズを買いに行く時間、出張・旅先にネガネ・コンタクトレンズを持っていく手間等々。。。裸眼で運転も出来ないですし。。。

目の良い人はこの時間と手間を気にしなくていい・・・それを手術でチャラに出来るならさっさと手術を受けようって思いました。

 

きっと私がレーシックを受けた頃よりも厳密には精度、安全度は上がっていると思います。

もちろん当時も安全だと解って受けていますが、当時と比べると時代の進化、症例数の増加によって手術結果も洗練されてきていると思います。

”手術が心配” ”手術で得られるメリット”  いろんな価値観があると思います。

PTK

PTKとはPhototherapeutic Keratectomy=治療的角膜切除術と言います。

疾病による角膜混濁がある場合には、その混濁の除去を目的としたエキシマレーザー照射となりますのでPTKと言います。アベリノ角膜変性、顆粒状角膜変性、帯状角膜変性等の疾患やラゼック術後のヘイズの除去にもPTKは用いられます。

手術手技は・・・PRKやラゼックとほとんど同様です。角膜表面の混濁をレーザーで除去するだけなのでシンプルです。

切除範囲と切除量をどの程度行うか・・・症例によって混濁の原因、程度はそれぞれ異なります。照射データの入力値はいろいろ検討が必要です。

症例によっては混濁除去と屈折矯正を同時に行います。

帯状角膜変性の場合では・・・(瞳孔の下半分を覆う混濁です)

術直後の写真ですが、これくらいの透明度に改善します。

もちろん病状(混濁の程度や他の目の病気の有無)によって視力回復の程度は異なりますが、角膜の混濁が解消することでの視機能の改善の効果は大きいと思います。

 

山口県内にエキシマレーザーを設置している施設はかわもと眼科しかありません。

症例数はそれほど多くはありませんが、エキシマレーザーを用いて角膜混濁の治療が必要な患者様にご来院いただいています。

アベリノ角膜変性症

遺伝性角膜疾患・・・角膜に異常を来たす遺伝疾患は多々あります。

最近よく聞かれるのはアベリノ角膜変性症です。

アベリノ角膜変性症は遺伝性角膜疾患のひとつです。

 

進行すると上記写真のように角膜に混濁が生じてくるので視力低下を来たします。

遺伝子疾患ですので根本的には治療は出来ませんが、視力低下の進行を遅らせる方法はあります。

方法は・・・角膜の混濁をエキシマレーザーで削って除去する方法です。

混濁を除去しても時間経過で徐々に混濁が再発してくる症例もあります。

若くして高度な混濁が進行する場合は角膜移植を行うこともあります。

遺伝性疾患ですのでご家族で同様の疾患の方がいらっしゃらないか確認させていただくこともあります。最終的な確定診断のために遺伝子タイプを調べるための遺伝子検査を行うことはあります。

 

仮にこのような角膜疾患の患者様が屈折矯正手術をご希望された場合には・・・

レーシックでフラップ作成すると、フラップ下に混濁が強くなることがあるのでレーシックを行うことは不可です。

基本的にラゼックで角膜を削って屈折矯正と混濁除去を同時に行うようにしています。

もちろん混濁の程度が強い場合には矯正の限界、術後視力の限界はあります。

遺伝子疾患なので長期経過で再び角膜に混濁が生じてくることもあります。

治療の限界はあります。遺伝子疾患なので根治治療は難しい疾患です。

しかし手術前よりも視力回復をする症例が多く喜ばれる患者様が多いです。

レーシックの再手術

手術前の適応検査で”私の目は再手術はできますか?”とよく聞かれます。

基本的に・・・・再手術が必ず出来る方を初回手術の適応にしています。

そのため度数がかなり強い方や、極端に角膜が薄い方は角膜を削らない術式(人工レンズを目の中に固定する方法)をおすすめしています。

レーシックの術後に角膜の厚さがギリギリで再手術が難しくなりそうな場合は、初回の手術はラゼックで行っています。

ラゼックの術後に角膜の厚さがギリギリで再手術が難しくなりそうな場合は、初回の手術は角膜を削らないで人工レンズによる矯正方法をおすすめしています。

適応基準をしっかり満たしていれば、レーシック等の屈折矯正術後に手術前と全く同じような度数に再近視化して見えにくくなることは考えにくいですが・・・多少の再近視化は起こることがあります。

・レーシック、ラゼックは角膜を削って角膜のカーブを変えて度数矯正を行います。

・術後は角膜が薄くなり角膜のカーブが変わります。

・通常はその角膜のカーブは維持されるので、視力が維持されます。

・まれにその角膜のカーブにわずかに戻りが起こると、わずかに再近視化が起こります。

追加矯正=再手術とは・・・わずかに再近視化した角膜のカーブの戻りを削ることです。

術後検診で再近視化が認められている場合、視力低下による不便があれば再手術で対応しています。

 

ラゼックの術後管理

ラゼックはフラップを作らずに角膜を削る矯正方法なので表面照射と言われています。

ラゼックではフラップを作らないので術後にステロイド点眼と紫外線予防というメンテナンスを行う必要があります。

メンテナンスを怠ると・・・角膜中央にヘイズという混濁が生じることがあります。

程度の差はありますが・・・ヘイズが強くなると視力に影響してきます。

経験的には・・・ラゼック術後に強いヘイズが出る症例に出会うのは多い年で年間に2~3人くらいだと思います。

過去に強いヘイズに対して追加でレーザー照射しなくてはならない症例を数例程度は経験しています。

つまり・・・

①ラゼックで手術を受けられた方のほとんどは何の問題なく視力回復をしています。

②仮にヘイズが発生してもほとんどの方は投薬を増やすことで治療が出来ます。

③仮に強いヘイズが発生しても再度レーザー照射を行うことで治療が出来ます。

 

ラゼック術後にステロイド点眼を忘れずに使っていただければ、まず強いヘイズが出ることはありません。仮にヘイズが出ても経過観察のための術後通院をしていただければ、早めに目薬の変更で対応できます。

ラゼックの術後は短期的には痛みや視力回復に時間がかかります。しかしその時期をクリアすればレーシックと同等の術後の視力回復が得られます。                       もし角膜の厚さや角膜の形状でラゼックでの手術適応になった場合でも安心して手術を受けていただけると思います。